地方の中小企業の採用戦略は、媒体を増やす前に「誰に」「何を」伝えるかを決め、ハローワーク・有料の求人媒体・社員紹介(リファラル)の3つを土台にして、職種に応じてSNSやスカウトを足す形が、いちばん費用対効果が合います。この記事は、福岡や九州をはじめ地方で従業員30〜150名の会社を経営し、「求人を出しても応募が来ない」と悩んでいる経営者・人事担当者に向けて書いています。
応募が来ない原因の分け方、採用チャネル8つの比較表、職種別の組み合わせ例、よく起きる失敗、見直し前のチェックリストの順で整理しました。
地方の中小企業で応募が来ない原因は3つに分けられる
| 原因 | 起きていること | 見分け方 |
|---|---|---|
| ① 母数が少ない | 地域に、その職種の経験者や働ける年代の人がそもそも少ない | どの媒体に出しても、表示回数や閲覧数自体が少ない |
| ② 知られていない | 求人は見られているが、会社の名前を知らないので選ばれない | 閲覧数はあるのに、応募率(応募÷閲覧)が1%を切る |
| ③ 伝わっていない | 求人の中身が他社と同じで、働く姿が想像できない | 応募は来るが、面接の辞退や入社後3か月以内の退職が多い |
原因によって打ち手は変わります。①なら、通勤圏を広げる、未経験者や60代も対象にする、条件を見直すといった「誰に」の見直しが先です。②なら、出す場所(チャネル)を増やすより、地元で名前を知ってもらう工夫が効きます。③なら、求人原稿の中身、つまり会社の魅力の打ち出し方を作り直します。
あなたの会社がどれに当たるかは、今出している求人の「閲覧数」「応募数」「面接数」「入社数」を並べると、だいたい見えてきます。数字がない場合は、次の募集から記録するところから始めます。
あわせて読みたい中小企業の採用戦略を5つのステップで組み立てる方法
地方中小企業の採用チャネル8つ|費用と向いている職種の比較
| チャネル | 費用の目安 | 向いている職種・場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| ハローワーク | 無料 | 地元の中高年層、事務・製造・介護など | 求人票の情報量が限られ、写真や雰囲気が伝わりにくい |
| 有料の求人媒体(掲載型) | 4週間で数万〜数十万円 | 若手〜中堅、営業・販売・サービス | 掲載期間中に応募がなくても費用はかかる |
| 人材紹介 | 採用した人の年収の30〜35%前後 | 管理職、専門職、急ぎの欠員 | 1名あたりの費用が大きく、地方では紹介できる人が少ない |
| 社員紹介(リファラル) | 紹介手当として1名1万〜10万円程度 | 全職種。とくに定着を重視する場合 | 社員が自社を勧めたくなる職場でないと出てこない |
| SNS(Instagramなど) | 無料〜(運用の手間がかかる) | 若手、店舗・現場の雰囲気が魅力の職種 | 効果が出るまで半年〜1年かかる |
| スカウト(ダイレクトリクルーティング) | 月額利用料や成功報酬 | 専門職、経験者 | 送る相手を選ぶ手間が大きく、文面で返信率が大きく変わる |
| 自社の採用ページ | 制作費のみ | 全職種の「受け皿」 | 単体では人が集まらない。媒体やSNSから見に来た人が読む場所 |
| 地元の学校・合同説明会 | 無料〜数万円 | 新卒、第二新卒 | 関係づくりに数年かかる |
地方では、人材紹介やスカウトは、紹介できる人や送れる相手が都市部より少なくなります。そのため多くの場合、ハローワークと有料の求人媒体で「見つけてもらう」量を確保し、社員紹介で「定着しやすい人」を増やす形が土台になります。
地方の採用戦略は「誰に・何を・どこで」の3ステップで決める
ステップ1:誰に|採用したい人を1人に絞って書く
「20〜30代の経験者」では広すぎます。「隣の市に住む、子育てが落ち着いた40代。前職は小売の店長で、土日休みを希望」のように、1人の人物として書きます。これを採用ペルソナと呼びます。人物像が決まると、出す媒体も、求人に書く言葉も決まります。あなたの会社で直近に入社して活躍している人がいれば、その人をモデルにすると書きやすくなります。
あわせて読みたい採用したい人物像(ペルソナ)を1人に絞って書く手順
ステップ2:何を|自社の魅力を3つ、具体的な言葉にする
地方の中小企業が大手と同じ「アットホームな職場」「やりがい」を書いても、比べられた瞬間に負けます。打ち出すのは、数字や場面で言える事実です。たとえば「転勤なし」「17時半に全員が帰る日が月の8割」「入社3年目で現場リーダーを任せた例が直近で4人」のような書き方です。これが採用ブランディング、つまり「選ばれる理由」を言葉にする作業です。
魅力が見つからないときは、入社3年以内の社員3名に「なぜ入社を決めたか」「入ってよかったことは何か」を聞きます。社長が考える魅力と、社員が感じている魅力は、ずれていることがよくあります。
ステップ3:どこで|土台の3つに、職種に合わせて1つ足す
チャネルは最初から全部に手を出しません。ハローワーク・有料の求人媒体・社員紹介を土台にして、職種に合わせて1つだけ足し、3か月は変えずに数字を見ます。
職種別の組み合わせ例|製造・介護・営業・専門職
| 職種 | 土台 | 足す1つ | 求人に書く魅力の例 |
|---|---|---|---|
| 製造・現場職 | ハローワーク+有料の求人媒体 | 社員紹介の手当を上げる | 残業時間の実績、資格取得の会社負担、夜勤の有無 |
| 介護・福祉 | ハローワーク+有料の求人媒体 | 地元の学校・合同説明会 | 1人あたりの担当人数、休みの取りやすさ、研修の回数 |
| 営業・販売 | 有料の求人媒体+社員紹介 | SNS(店舗や社員の様子を発信) | 評価と昇給のしくみ、転勤の有無、1日の流れ |
| 専門職(IT・設計など) | 有料の求人媒体+社員紹介 | スカウト | 任せる仕事の範囲、使う技術、リモートの可否 |
どの職種でも共通するのは、「評価と昇給のしくみ」を書ける会社が強いことです。地方では給与の額で大手と競うのが難しいぶん、「何をすれば、いつ、いくら上がるか」を説明できると、応募の決め手になります。
よく起きる失敗|3か月ごとに媒体を変えて、何が効いたか分からなくなる
福岡を中心に九州の会社の採用と評価制度に関わる中で、何度も見てきたのがこのパターンです。たとえば従業員45名の製造業が、1月に有料の求人媒体A、4月に媒体B、7月にSNS広告と、応募が来ないたびに出す場所を変えます。1年で媒体費は約180万円かかり、採用できたのは2名。どの媒体の、どの原稿が効いたのかは誰にも分かりません。
この会社の場合、原因は②でも③でもなく、求人原稿が1年間ほぼ同じだったことでした。場所を変えても、中身が同じなら結果は大きく変わりません。媒体は3か月固定し、そのあいだに原稿の見出しと写真を1回ずつ変えて、閲覧数と応募数を比べるほうが、少ない費用で答えが出ます。
あわせて読みたい採用した人を辞めさせない、入社1か月の面談の進め方
採用戦略を見直す前のチェックリスト7項目
- 直近の募集で、閲覧数・応募数・面接数・入社数を記録している
- 応募が来ない原因が、母数・知られていない・伝わっていないのどれかを決めた
- 採用したい人を、1人の人物として書き出した
- 自社の魅力を、数字や場面で言える形で3つ書いた
- 求人に、評価と昇給のしくみを書いた
- チャネルは土台の3つ+1つに絞り、3か月は変えないと決めた
- 入社後3か月以内に辞めた人の理由を、本人か上司から聞いた
4つ以上にチェックが入らないなら、媒体を変える前に、上の3ステップのどこかで止まっています。
どの媒体に、いくらかけるかは会社ごとに変わります
チャネルの組み合わせ方は、職種、地域の人の多さ、採用したい人数、今の給与水準によって答えが変わります。ここから先は、あなたの会社の数字を見ながら判断が分かれるところです。
当社は福岡を拠点に、九州の中小企業の採用と人事制度を支援しています。マイナビをはじめ複数の求人媒体を取り扱っており、媒体選びから求人原稿づくり、採用した人を育てる評価制度まで一緒に考えます。「今の求人のどこを直せばいいか」という段階のご相談でもかまいません。お問い合わせフォームからご連絡ください。
著者プロフィール
野村 幸太(のむら こうた)/株式会社クリアマネジメント 代表
株式会社あしたのチームで福岡支社の立ち上げに参加し、広島・福岡の支社長、西日本エリアマネージャーを歴任。8年間で200社を超える人事評価制度の構築・運用を支援しました。2022年に福岡でクリアマネジメントを設立し、従業員30〜150名の中小企業を中心に、人事評価制度・組織づくり・採用・AI活用を支援しています。
