「うちの若手、全然やる気がないんだよな…」
そう感じている経営者や人事担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。
2025年にマイナビが実施した「20代正社員の仕事・私生活に関する意識調査」によると、20代正社員の52.3%が「出世を望まない」と回答。過半数の若手社員が、昇進・昇格よりも別の価値観を優先していることが明らかになりました。
出典:昇進したい役職は「係長・主任クラスまで」が最多 出世したくない人は52・3% 理由は…20代正社員意識調査(スポーツ報知) – Yahoo!ニュース
しかし、これを「最近の若者はやる気がない」と片付けてしまうのは大きな誤解です。
彼らは”出世”を望んでいないだけで、“成長”や”貢献”を拒んでいるわけではありません。
この記事では、調査データを読み解きながら、
- なぜ20代は出世を望まないのか?その本質的な理由
- 中小企業が陥りがちな「旧来型マネジメント」の落とし穴
- 若手が自発的に動く組織をつくるための具体的なアプローチ
を解説します。人材確保・定着に課題を感じている経営者・人事担当者の方に、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
1. なぜ今、「出世したくない若手」が増えているのか?
データが示す「価値観の地殻変動」
マイナビの調査では、出世を望まない理由として以下が挙げられています。
- 「面倒が増えるだけ」
- 「給料はあまり増えないのに責任ばかり増える」
- 「ワークライフバランスが崩れそう」
これらの言葉の裏にあるのは、「コストとリターンが釣り合わない」という冷静な損得計算です。
かつての日本型雇用では「がんばれば報われる」という暗黙の前提がありました。しかし、バブル崩壊・リストラ・終身雇用の崩壊を目の当たりにしてきた20代は、会社への全面的な信頼を前提にしていません。
「出世してもリターンが見えない → リスクを取る合理的理由がない」
これが現代の20代の本音です。
「係長・主任クラスで十分」という現実
同調査では、「出世したい」と答えた人の中でも、**51.8%が「係長・主任クラスまで」**を目標としており、部長・役員など上位管理職を目指す若手は少数派です。
これは「出世への意欲がゼロ」ではなく、「適度なポジションで安定したい」という現実的な志向性を示しています。
この傾向を無視して「もっと上を目指せ」と叱咤激励するマネジメントは、むしろ離職を加速させるリスクがあります。
2. 中小企業が特に注意すべき「人材育成の落とし穴」
落とし穴①:「昇格=モチベーション」という思い込み
多くの中小企業では、評価制度が「昇格・昇給」を中心に設計されています。しかし、出世を望まない層にとって、昇格の見通しはモチベーション要因になりません。
むしろ「昇格しないと評価されない」という空気が、優秀な若手の離職を招くケースが増えています。
対策:「専門職キャリアパス」の整備
昇格(管理職)だけでなく、専門性を高めるキャリアラダーを用意することで、出世を望まない層も「成長実感」を得られる設計が必要です。
落とし穴②:「頑張れば伝わる」式の曖昧な評価
中小企業に多いのが、評価基準が明文化されておらず、上司の主観で評価が決まる構造です。
透明性のない評価は、「どう頑張っても評価されない」という無力感につながります。これが「どうせ出世しても割に合わない」という諦め感を強化します。
対策:評価基準の「見える化」
何をどう評価するかを明示し、フィードバックの仕組みを整えることで、若手の行動変容と信頼感の醸成が期待できます。
落とし穴③:「働きやすさ」の整備を後回しにする
「給料を増やせばやる気が出るだろう」という考えも、今の20代には通用しにくくなっています。
調査でも「ワークライフバランスが崩れそう」という懸念が出世忌避の主要因として挙がっており、「働きやすさ」への投資が優秀人材の確保に直結します。
3. 事例・実践例:若手が自発的に動き出した組織変革の現場
事例①:製造業(従業員数50名)
「若手がすぐ辞める」という課題を抱えていた製造業の企業。ヒアリングを行うと、「評価基準が不明確で何をしても変わらない」という不満が多数出てきました。
支援を通じて等級別評価シートの整備と半期ごとの1on1面談を導入。評価の根拠が「見える化」されたことで、若手社員から「頑張りが認められた気がする」という声が増え、3年間で離職率が半減しました。
事例②:ITサービス業(従業員数30名)
管理職を目指す若手がゼロに近く、リーダー不在が慢性化していたITベンチャー。
調査を行うと「マネジャーになると技術から離れてしまう」という不安が背景にありました。そこで、「テックリード」という専門職コースを新設し、管理職にならなくても昇格・昇給できるキャリアパスを設計。
その結果、「テックリードを目指したい」という若手が複数名現れ、技術部門の活性化につながりました。
事例③:小売業(従業員数80名)
店長候補に声をかけても断られ続けていた小売チェーン。
「店長になると休みが取れなくなる」という認識が広まっていたため、店長業務の棚卸しと権限委譲の再設計を実施。副店長への業務分散により、「店長でも週2日は必ず休める」体制を整備。以降、店長候補への打診成功率が大幅に向上しました。
4. よくある誤解・注意点
誤解①:「出世を望まない=やる気がない」
最も多い誤解です。出世を望まない社員でも、自分の仕事に誇りを持ち、貢献意欲が高い人材は多く存在します。
「管理職になりたくない」のは「仕事したくない」ではなく、「今の管理職のあり方に魅力を感じない」ことへの表れである場合がほとんどです。
→ 対策:管理職のあり方そのものを見直す
誤解②:「給与を上げれば解決する」
もちろん給与水準は重要ですが、それだけでは不十分です。承認欲求・成長実感・関係性の質など、非金銭的報酬への対応も必要です。
→ 対策:1on1・ピアフィードバック・表彰制度などの整備
誤解③:「Z世代は特別扱いが必要」
「Z世代向けの特別プログラムを作らなければ」と焦る必要はありません。むしろ重要なのは、すべての社員が安心して働ける組織の土台づくりです。
特定の世代への対応ではなく、組織設計の普遍的な見直しが本質的な解決策です。
まとめ
今回のマイナビ調査が示すのは、「若者の意欲低下」ではなく、「従来型の出世モデルへの不信任」です。
この変化に対応するために、中小企業の経営者・人事担当者が今すぐ取り組むべきポイントを整理します。
- ✅ 評価基準の明文化:何が評価されるかを全社員に示す
- ✅ 複線型キャリアパスの整備:管理職以外の成長ルートをつくる
- ✅ 働き方の柔軟化:管理職でも働きやすい環境を設計する
- ✅ 承認・フィードバックの仕組み化:月1回の1on1、定期的な評価面談の導入
- ✅ 「出世を望まない」を正しく解釈する:意欲と出世志向を分けて考える
若手社員が出世を望まない時代だからこそ、「昇格しなくても活躍できる組織」を設計した企業が、採用・定着・生産性の三拍子で優位に立てます。
人事評価・組織設計のことなら、まずはご相談ください
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著者プロフィール
組織・人材開発コンサルタント
中小企業を中心に、組織設計・リーダー育成・採用戦略の支援を行う。支援実績:製造業・IT・小売・サービス業など多業種。「現場で使える仕組みづくり」を信条に、評価制度設計・キャリアパス整備・管理職研修などを一気通貫で支援。
