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優秀な人ほど「付加価値ゼロの時間」を抱えている|属人化が奪う「本当のコスト」とは

組織づくり

「なぜ、できる人ほど忙しいのか。」

あなたの会社で、こんな光景はありませんか?

  • 新しいプロジェクトを任せたいのに、Aさんはいつも手が空いていない
  • 「Aさんに聞けばわかる」が当たり前になっていて、誰も疑わない
  • Aさん本人も「自分がやったほうが早い」と思っている

これは、Aさんが優秀だから起きているのではありません。組織が、優秀な人の時間を正しく使えていないから起きています。

属人化のコストを「リスク」として語ることは多いですが、もっと直接的な問題があります。それは、属人化を「維持するための時間」が、あなたの会社でもっとも付加価値を生める人材に集中しているという事実です。

この記事では、属人化コストを「時間」という切り口で捉え直し、優秀な人材が本来発揮すべき力をどう解放するかを、中小企業の経営者・人事担当者向けに具体的に解説します。

関連記事:人を減らすか、育てるか——AI導入時代の組織設計と人材戦略の分岐点

この記事を読み終えると、こんな変化があります:

  • 「属人化=リスク」という捉え方から「属人化=時間の無駄遣い」という視点に変わる
  • 優秀な人の時間が、何にどれだけ奪われているかが見えるようになる
  • 組織設計・評価制度の見直しで、何から手をつけるべきかがわかる

1. 「属人化コスト」の正体は、時間だ

コストは決算書に出ない。でも、確実に払っている。

属人化によって発生するコストは、経費として計上されません。帳簿には現れない。だから見過ごされます。

しかし、経営者が見落としているだけで、コストは確実に発生しています。その正体は「時間」です。

具体的には、こういう時間が毎日積み重なっています。

  • 「Aさんに確認しないと進められない」という待ち時間
  • Aさんが他の人の質問に答え続ける時間
  • Aさんにしかわからない作業を、Aさんがひとりでこなす時間
  • Aさんが抱えすぎて、本来やるべき仕事を後回しにしている時間

これらはすべて「属人化を維持するためのコスト」です。そして、このコストのほとんどを組織の中でもっとも優秀な人材が引き受けています。

「付加価値ゼロの時間」とは何か

ここで整理しておきたい概念があります。

付加価値を生む時間とは、その人だからこそできる判断・発想・関係構築・戦略立案などに使われる時間です。これは、その人の能力が組織の成果に直結する時間です。

一方、付加価値ゼロの時間とは、誰でもできるのに特定の人しかやり方を知らないから、その人がやるしかない時間のことです。

例えば——

  • 「この顧客の事情はAさんしか知らない」から、Aさんが毎回対応する
  • 「この集計作業のやり方はAさんにしかわからない」から、Aさんがやる
  • 「このシステムの操作はAさんだけができる」から、Aさんが呼ばれる

これらの業務は、仕組み化・文書化・標準化すれば他の人でもできます。それでもAさんがやり続けているのは、組織がその仕組みを作ることをサボってきたからです。


2. 属人化を「維持」するためにどれだけの時間が使われているか

属人化維持コストの3層構造

属人化を維持するための時間は、3つの層で発生しています。

第1層:直接対応時間 これがもっとも見えやすい層です。特定の人しか対応できない問い合わせ・作業・判断に使われる時間。「Aさん、ちょっといいですか」が積み重なる時間です。

中小企業でよく見られるのは、この「ちょっといいですか」が1日に何十回も発生しているにもかかわらず、誰もその総量を把握していないケースです。

第2層:引き継ぎ不能による再作業時間 属人化が進んだ組織では、業務が他の人に引き継げないため、その人が不在のときに業務が止まったり、戻ってから全部やり直したりする時間が発生します。これは「見えにくい再作業コスト」です。

第3層:本来やるべき仕事を後回しにする時間 もっとも深刻なのがこの層です。第1層・第2層の時間に追われた結果、優秀な人材が本来取り組むべき戦略的・創造的な仕事を後回しにし続けている状態です。

これは「やっていない時間」なので、帳簿にも議事録にも現れません。でも、組織が失っている価値としては最大です。

試算してみる

仮に、月給50万円の優秀なAさんが、属人化維持コストに1日2時間取られているとします。

  • 月の労働時間:約160時間
  • 属人化維持に使われる時間:2時間 × 20日 = 40時間
  • 割合:160時間中40時間 = 25%
  • 金額換算:50万円 × 25% = 月12.5万円

この12.5万円は、毎月「付加価値ゼロの時間」に消えています。年間で150万円。しかも、これはAさん1人の試算です。

「うちの会社でAさんに相当する人が何人いるか」を考えると、その規模が見えてきます。


3. うまくいく企業 vs うまくいかない企業

🔴 うまくいかない企業の特徴

観点行動・思考パターン
優秀な人の使い方「あの人は仕事が早いから、あの仕事もお願いしよう」が続く
時間の可視化誰が何にどれだけ時間を使っているか把握されていない
仕組み化への姿勢「Aさんに聞けばいい」で止まり、標準化・文書化を後回しにしている
評価の設計抱え込んで成果を出す人が評価される。教える・共有するは評価されない
マネジメント優秀な人が忙しそうにしているのを「頑張っている」と見ている
経営の認識「あの人がいてくれるから助かる」で思考が止まっている

🟢 うまくいく企業の特徴

観点行動・思考パターン
優秀な人の使い方付加価値を生む仕事に集中できる環境を意図的に設計している
時間の可視化誰が何にどれだけ時間を使っているかを定期的に把握・分析している
仕組み化への姿勢「その人しかできない業務」を発見したら、即座に標準化プロジェクトを立ち上げる
評価の設計業務の標準化・ナレッジ共有・後進育成を明確な評価項目に組み込んでいる
マネジメント1on1などを通じて「何に時間を使っているか」を定期的に把握している
経営の認識「優秀な人の時間を何に使わせるか」を経営課題として意識している

自社はどちらに近いですか?

「うまくいかない企業」の特徴が複数当てはまるなら、今この瞬間にも優秀な人材の時間が、付加価値ゼロの仕事に消えています。


4. よくある誤解・注意点

誤解①「忙しいのは本人が仕事を断れないから」

「Aさんが断ればいい話」という見方をする経営者・管理職は少なくありません。しかし、これは本質を外しています。

優秀な人が「断れない」のは、組織の構造がそうなっているからです。断ったところで「他に誰もできない」なら業務は止まります。個人の意志や性格の問題ではなく、仕組みが整っていないことが問題の根本です。

誤解②「標準化すると、優秀な人のモチベーションが下がる」

反対に、標準化・仕組み化によって優秀な人が本来好きな仕事・得意な仕事に集中できるようになれば、モチベーションは上がります。

優秀な人材が組織を離れる理由のひとつが「自分の能力を活かしきれていない」という感覚です。属人化の解消は、優秀な人材の定着にも直接つながります。

誤解③「人事評価を変えるだけで解決できる」

評価制度に「ナレッジ共有」「後進育成」を加えることは有効ですが、評価制度だけを変えても属人化は解消しません。

業務の標準化・役割設計の明確化・マネジメントの仕組みをセットで変えないと、「評価項目にはあるが、実態は変わらない」という形骸化に陥ります。制度と運用を同時に変えることが重要です。

誤解④「属人化解消は時間と手間がかかりすぎる」

「いまの業務量でそんな余裕はない」という声はよく聞きます。しかし、属人化解消に手をつけないことで毎月発生している時間コストと、解消に投資する一時的なコストを比較すると、前者のほうがはるかに大きいのが現実です。

また、すべてを一度に変える必要はありません。「誰がもっとも属人化コストを引き受けているか」を特定し、その人の業務から優先的に手をつけるだけでも、効果は十分に出ます。

関連記事:マネージャーが管理できる人数には限界がある――スパンオブコントロールの適正値と組織設計への活用法


まとめ

この記事で伝えたかったことを整理します。

  • 属人化のコストは「時間」として支払われている。 決算書に現れないだけで、毎日・毎月確実に発生している
  • そのコストを引き受けているのは、組織の中でもっとも優秀な人材だ。 できる人ほど、付加価値ゼロの時間を抱え込む構造になっている
  • 属人化は3層で時間を奪う。 直接対応時間・再作業時間・本来やるべき仕事の先送り時間
  • うまくいく企業は「優秀な人の時間を何に使わせるか」を意識的に設計している。 できる人への依存を美徳にしない組織文化と仕組みがある
  • 解決策は「仕組み化+評価制度+マネジメント」のセットで動かすこと。 単品での対策は形骸化しやすい

次に取るべきアクション:

  1. 自社で「その人しかできない業務」を書き出してみる
  2. その業務に、誰がどれだけの時間を使っているかを可視化する
  3. 「標準化できる業務」と「本当にその人でなければならない業務」を分類する

人事評価・組織設計のことなら、まずはお気軽にご相談ください

「何から手をつければいいかわからない」 「優秀な社員が忙しそうなのは感じているが、具体的に何が問題かを言語化できていない」

そのような段階のご相談でも、丁寧にお応えします。

属人化の解消は、組織設計・人事評価制度・マネジメントの仕組みを組み合わせて初めて機能します。 当社では、中小企業の実態に合わせた現実的なアプローチで、組織の構造的な課題を解決するご支援を行っています。


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  • 所要時間:60分程度(オンライン可)
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  • こんな方におすすめ:「優秀な人材の時間を正しく使えているか確認したい」「人事評価制度を見直したい」「属人化を仕組みで解消したい」

著者プロフィール

組織・人材開発コンサルタント

中小企業を中心に、組織設計・リーダー育成・採用戦略の支援を行う。支援実績:製造業・IT・小売・サービス業など多業種。「仕組みで人が育つ組織」をテーマに、人事評価制度の構築から1on1の定着、管理職育成まで幅広く対応。現場の実態に根ざしたコンサルティングスタイルが特徴。