中小企業が人事制度コンサルを選ぶときは、「納品のあと、運用まで付き合ってくれるか」「社内の作業量を最初に見積もってくれるか」「実際に手を動かす担当者は誰か」の3点を見れば、大きな失敗はほぼ避けられます。この記事は、従業員30〜150名の会社で、初めて人事制度づくりを外部に頼むか迷っている経営者・人事担当者に向けて書いています。
費用の目安、依頼前に確認する10項目、よく起きる失敗、頼まないほうがよいケースまで、比較表やチェックリストの形でまとめました。
人事制度コンサルに頼むメリットは3つ|自社だけでつくる場合との違い
| 比べる点 | 自社だけでつくる | コンサルに頼む |
|---|---|---|
| かかる期間 | 1〜2年(通常業務の合間に進むため止まりやすい) | 4〜6か月が目安 |
| 外に出ていく費用 | ほぼ0円 | 数十万〜数百万円 |
| 社長・担当者の作業時間 | すべて社内で負担 | ヒアリングと確認が中心 |
| 基準の客観性 | 社長の考えがそのまま基準になりやすい | 他社の事例と比べて調整できる |
| 社員への説明 | 社長が一人で説明する | 第三者として説明会や面談に入れる |
1つ目のメリットは、止まらずに終わることです。自社だけで進めると、繁忙期のたびに作業が止まり、「去年つくりかけた評価シート」が残りがちです。2つ目は、他社と比べた物差しが手に入ることです。等級の数や昇給の幅が世間と比べて妥当かどうかは、社内だけでは判断しにくい部分です。3つ目は、社員への説明に第三者が入れることです。社長が一人で「新しい評価制度です」と言うより、外部の人が根拠を説明したほうが受け入れられやすくなります。
反対に、外に払う費用は確実に増えます。メリットが費用に見合うかどうかは、次の章の目安と見比べて判断してください。
中小企業の人事制度コンサルの費用|依頼先の種類と契約形態で変わる
費用は、どこに頼むかと、どんな契約にするかで大きく変わります。
| 依頼先 | 得意なこと | 費用の傾向 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 大手コンサルティングファーム | 大規模な制度改革、他社データの量 | 数百万円規模になることが多い | 300名以上、複数事業・複数拠点 |
| 中小企業向けの人事コンサル | 実態に合わせた設計、運用の伴走 | 数十万円から。範囲で変わる | 30〜150名で、運用まで任せたい |
| 社会保険労務士事務所 | 就業規則・労務リスクとの整合 | 顧問料に含まれる場合もある | 規程の整備を優先したい |
| 個人のコンサルタント | 柔軟な対応、費用を抑えやすい | 数十万円から | 担当者との相性を重視したい |
参考として、当社の場合は人事評価制度の設計が20万円から、報酬制度の設計が10万円から、運用支援が月額5万円から(いずれも税抜)です。運用支援は6か月〜1年で区切ることが多く、ずっと払い続ける前提ではありません。
契約形態は3つ|見積もりは形態をそろえて比べる
| 契約形態 | 中身 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| プロジェクト型 | 制度設計を一式で請け負う。期間と成果物がはっきりしている | 納品後の運用支援は別契約になることが多い |
| 顧問型(月額) | 毎月決まった額で、運用の相談や面談に入ってもらう | 何をどこまで頼めるか、範囲があいまいになりやすい |
| スポット型 | 評価シートだけ、賃金表だけなど、一部の工程を頼む | 全体の整合は自社で取る必要がある |
A社は「設計一式150万円」、B社は「設計60万円+月額8万円×12か月」という見積もりが並ぶと、金額だけでは比べられません。B社は1年で156万円です。設計だけで比べるのか、1年目の運用まで含めて比べるのか、条件をそろえてから判断します。
依頼前に確認する10項目|人事制度コンサルの注意点チェックリスト
提案や見積もりを受け取ったら、次の10項目を1つずつ確認してください。答えがあいまいな項目が3つ以上あれば、契約前にもう一度話を聞いたほうが安全です。
- 成果物は何か。等級表、評価シート、賃金表、規程、運用マニュアルのどこまでが含まれるか
- 納品後の支援はあるか。1回目の評価や評価面談に立ち会ってもらえるか、その費用はいくらか
- 社内の作業量はどのくらいか。社長・担当者が月に何時間使う想定か
- ヒアリングの範囲はどこまでか。経営者だけか、管理職や一般社員にも話を聞くか
- 実際の担当者は誰か。提案に来た人と、手を動かす人が同じか
- 中小企業の支援実績はあるか。自社と近い人数・業種の例を聞けるか
- 今の給与からの移り方を設計に含むか。新しい賃金表で下がる人が出たときの扱いまで決めるか
- 社員への説明を手伝ってもらえるか。説明会や資料づくりが範囲に入っているか
- 期間は現実的か。30〜150名で2か月以内といった極端に短い期間なら、どこを省くのか
- 途中でやめられるか。工程ごとの区切りと、解約時の費用
とくに3番目の「社内の作業量」は、見落とされやすい項目です。コンサルに頼んでも、評価項目の確認や管理職との打ち合わせには社内の時間が必要です。従業員50名規模なら、社長と人事担当1名で月に8〜10時間は見ておくと、途中で止まりにくくなります。
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よく起きる失敗|立派な制度設計書が納品され、2年目に使われなくなる
コンサルを選ぶ側ではなく、選ばれる側として8年で200社以上の人事制度に関わってきました。その中で、他社のやり直しとして相談を受ける案件に、よく似た流れがあります。
たとえば従業員60名の会社が、300万円で人事制度一式を依頼します。半年後に120ページの制度設計書と、評価項目が1人40個ある評価シートが納品されます。ところが1回目の評価で、課長1人が部下8名を評価するのに丸2日かかり、評価面談は半分しか実施できません。2回目の評価期には、評価シートは「つけたことにする」ものになり、昇給は結局、社長の判断に戻ります。
原因は、制度の出来ではなく、運用の量を契約前に誰も見積もらなかったことです。上の10項目の2番と3番を先に確認していれば、評価項目を1人15個程度に絞る判断ができました。あなたが提案を受けたときも、「1回目の評価にかかる時間」を提案者に試算してもらうと、この失敗はかなり防げます。
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人事制度コンサルに頼まないほうがよい3つのケース
支援する立場から書くのは妙な話ですが、外部に頼まないほうがよい場面もあります。
- 経営者の中で方針が決まっていない。「何を大事にする会社か」が決まらないまま頼むと、コンサルの考えがそのまま制度になります。先に社長の考えを1枚に書き出すほうが先です。
- 半年以内に大きな組織変更がある。合併、事業の売却、部署の大幅な統廃合が控えているなら、変更が落ち着いてから設計したほうが、つくり直しになりません。
- 運用を担う人が社内に1人もいない。制度は納品された日から社内で回すものです。担当者が決まらないなら、まずは顧問型で面談代行から始めるなど、頼み方を変えます。
相談の前に用意しておくと話が早い5つの資料
あなたの会社で相談先を比べるときは、次の資料を手元に置いておくと、各社の提案を同じ条件で比べやすくなります。すべてそろっていなくてもかまいません。
- 組織図(役職と人数がわかるもの)
- 今の評価シートや、評価で使っているExcel
- 給与の決め方がわかる資料(賃金台帳の一部、賃金表があればそれも)
- 就業規則と賃金規程
- 3年後に何名体制にしたいかのメモ
とくに給与の資料は、制度の中身を大きく左右します。評価の結果をどう昇給や賞与につなぐかは、今の給与の決まり方を見ないと設計できません。
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どこに、どこまで頼むかは会社ごとに違います
ここまでの10項目は、どの依頼先を比べるときにも使えます。ただ、プロジェクト型と顧問型のどちらが合うか、設計のどこまでを外に出して、どこを自社で持つかは、あなたの会社の人数、今の評価や給与の状態、社内で動ける人によって答えが変わります。ここから先は、個別の状況を見ながら判断が分かれるところです。
当社は福岡を拠点に、九州の30〜150名の会社を中心に、人事評価制度の設計から運用までお手伝いしています。「他社の見積もりと比べたい」「頼むべきかどうかから相談したい」という段階でもかまいません。人事評価制度づくりの進め方と費用をご覧いただくか、お問い合わせフォームからご連絡ください。
著者プロフィール
野村 幸太(のむら こうた)/株式会社クリアマネジメント 代表
福岡県を拠点に、中小企業向けの人事評価制度構築・組織設計・管理職育成を支援。支援実績は製造業・IT・小売・サービス業など多業種にわたる。「制度を作って終わりにしない」伴走型のコンサルティングスタイルで、経営者・人事担当者の相談に応じている。
