人事評価の結果分析は、Excelで4つの表を作れば足ります。ランクの分布、評価者ごとの平均、項目ごとの平均、前の期との比較です。この4つで、評価の偏りと、次の期に直すべき点が見えます。
対象は、評価を付け終わり、給与への反映の前に「この結果で本当にいいのか」を確かめたいあなたです。従業員30〜150名の会社を想定しています。高い分析ツールは要りません。評価シートの数字を1枚の表にまとめるところから始めます。
人事評価の結果分析は「4つの表」で足ります
| 表 | 見るもの | 分かること |
|---|---|---|
| 1. ランクの分布 | S・A・B・C・Dに何人ずついるか | 評価が甘すぎる、または真ん中に集まりすぎていないか |
| 2. 評価者ごとの平均 | 上司ごとの平均点とランクの分布 | 付け方が甘い上司・辛い上司がいないか |
| 3. 項目ごとの平均 | 行動評価・成果評価の項目別の平均 | 組織として弱い行動や、基準があいまいな項目 |
| 4. 前の期との比較 | 一人ひとりの点数の変化 | 伸びた人、下がった人、変化のない人 |
この順番で見ます。1と2で評価の付け方そのものを確かめ、3と4で組織と個人の課題を拾います。
Excelで集計する5つの手順
- 1人1行で並べる:列は「社員番号・氏名・部署・等級・評価者・項目1〜項目n・総合点・ランク」。評価シートが紙や個別ファイルでも、まずこの形の1枚にまとめる。
- ランクの人数を数える:ランクがJ列なら
=COUNTIF(J:J,"S")のように、S〜Dそれぞれの人数を出す。 - 評価者ごとの平均を出す:評価者がE列、総合点がI列なら
=AVERAGEIF(E:E,"山田",I:I)で、評価者ごとの平均を出す。 - 部署×等級で見る:ピボットテーブルで、行に部署、列に等級、値に総合点の平均を置く。
- 前の期と並べる:前期のシートから
=XLOOKUP(A2,前期!A:A,前期!I:I)で前期の総合点を引き、今期との差を出す。
ここまでで、作業は1〜2時間です。従業員50名なら、表は1枚に収まります。
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ランクの分布は「5・20・50・20・5」をひとつの目安にします
相対評価を使っていない会社でも、分布を見ると評価の付け方のくせが分かります。S・A・B・C・Dが、おおむね5%・20%・50%・20%・5%から大きく外れていないかを確かめます。
| 分布の形 | 起きていること | 確かめること |
|---|---|---|
| Bに70%以上が集まっている | 差をつけるのを避けている(中心化) | 評価基準の言葉があいまいで、差をつける根拠がないのではないか |
| A以上が40%以上いる | 評価が甘くなっている(寛大化) | 賞与や昇給の原資と合わなくなっていないか |
| C以下が30%以上いる | 評価が辛い、または目標が高すぎる | 期初の目標の難易度が適切だったか |
| 等級が上の人ほど評価が高い | 役職への遠慮や年功の影響 | 上位等級に、上位等級の基準で評価できているか |
評価者ごとの平均が0.5ランク以上ずれていたら、調整の場を持ちます
5段階評価で、ある上司の部下だけ平均が0.5ランク以上高い、または低い場合は、評価の付け方がそろっていない可能性があります。部下の実力の差なのか、上司の付け方の差なのかは、数字だけでは分かりません。評価者が集まって、根拠となる行動の事実を並べて話し合う場(評価調整会議)を持ちます。
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項目ごとの平均で、行動と成果の差を見ます
例えば、ある期の結果が次のようだったとします。
| 項目 | 平均 | 基準ライン |
|---|---|---|
| 行動評価 | 53.6% | 63.0% |
| 成果評価 | 61.6% | 63.0% |
平均点だけを見ると「全体的にやや低め」で終わります。分析の目で見ると、成果は基準に近いのに、行動評価だけが10ポイント近く低いことが分かります。考えられるのは2つです。「結果さえ出れば、やり方は問わない」という空気が育ちつつあるか、行動評価の基準があいまいで、上司が高い点を付けにくくなっているかです。どちらかによって、次の期に打つ手が変わります。
よく起きる失敗:平均点を見ただけで給与に反映してしまう
よく起きるのは、評価が出たら平均点だけを確かめて、そのまま昇給と賞与に反映するケースです。例えば従業員40名の会社で、評価者4名のうち1名だけが部下全員にA以上を付けていた場合、その部署の社員だけ賞与が高くなります。翌期にほかの部署から不満が出て、評価制度そのものへの信頼が下がります。
あなたの会社でも、給与に反映する前に、少なくとも表1と表2だけは確かめてください。
分析の結果から、次の期に打つ手を決めます
| 分析で分かったこと | 次の期に打つ手 |
|---|---|
| Bに集中している | 評価基準の言葉を、行動と数字で書き直す |
| 評価者の平均がずれている | 評価調整会議を開き、評価者研修を行う |
| 特定の行動項目だけ低い | その行動を、次の期の全員の目標に入れる |
| 前期から下がった人がいる | 評価面談の前に1on1で事情を聞く |
| 等級が上の人ほど高い | 上位等級の基準を見直し、期待の水準を上げる |
福岡で中小企業の評価制度の運用に関わっていると、分析の結果から制度を手直しした会社ほど、2期目・3期目に評価への納得感が上がっていきます。分析は、評価を付けたあとの「おまけ」ではありません。次の期の評価を良くするための作業です。
あわせて読みたい評価の分析を制度の見直しにつなげる、人事評価制度づくりの全体の順番
評価結果を分析できたか確かめるチェックリスト
- 全員の評価を、1人1行の1枚の表にまとめた
- S〜Dの人数と割合を出した
- 評価者ごとの平均を出し、0.5ランク以上のずれを確かめた
- 行動評価と成果評価の平均を、項目ごとに出した
- 前の期と比べて、2ランク以上動いた人を拾った
- 給与に反映する前に、評価者どうしで結果を確かめた
- 分析で分かったことから、次の期に直す点を1つ以上決めた
ここから先は、評価制度の作りによって見るべき数字が変わります
この記事の4つの表は、5段階評価で、行動評価と成果評価を組み合わせた制度を前提にしています。点数を足し上げる方式の会社、相対評価で配分を決めている会社、評価者が1人しかいない会社では、見るべき数字と目安が変わります。あなたの会社の評価シートで何をどう集計するかは、実際のシートを見ながら一緒に決められます。
人事評価のことなら、まずはご相談ください
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「評価制度の見直しを検討しているが、何から手を付けていいかわからない」という段階でのご相談も歓迎です。まずは現状のヒアリングから始めます。
著者プロフィール
野村 幸太(のむら こうた)/株式会社クリアマネジメント 代表
株式会社あしたのチームで福岡支社の立ち上げに参加し、広島・福岡の支社長、西日本エリアマネージャーを歴任。8年間で200社を超える人事評価制度の構築・運用を支援しました。2022年に福岡でクリアマネジメントを設立し、従業員30〜150名の中小企業を中心に、人事評価制度・組織づくり・採用・AI活用を支援しています。
